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広島地方裁判所 昭和53年(わ)116号 判決

本籍

広島県尾道市門田町二、二九〇番地

住居

同市門田町一番四三号

医師

金本明久

昭和二年一月一日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は検察官落合俊和出席のうえ審理をして、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一〇月および罰金一、三〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金二万円を一日に換算した期間、被告人を労役場に留置する。

この裁判の確定した日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、広島県尾道市門田町一番四三号において、金本外科病院を開業しているものであるが、自己が病身で将来に不安があったこと等から、蓄財のため自己の所得税を免れようと考え、同病院で経理を担当していた妻和子と共謀のうえ、病院の窓口収入のうち社会保険、国民健康保険の患者負担分を除く交通事故診療収入、自由診療収入等を公表帳簿から除外して無記名貸付信託を設定する等の不正な行為により所得の一部を秘匿したうえ

第一、昭和四九年分の自己の実際の所得金額が五九、七八四、四六一円で、これに対する所得税額が二八、三八一、七〇〇円であるにもかかわらず、昭和五〇年三月一五日、尾道市東御所町一〇番三四号所在の尾道税務署において、同税務署長に対し、所得金額が三五、一三九、五九一円で、これに対する所得税額が一二、六八九、三〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により昭和四九年分の正当な所得税額との差額一五、六九二、四〇〇円を免れ

第二、昭和五〇年分の自己の実際の所得金額が六八、一六五、〇九五円で、これに対する所得税額は三三、一二七、二〇〇円であるのにもかかわらず、昭和五一年三月一五日、尾道市古浜町二七番一八号所在の尾道税務署において、同税務署長に対し、所得金額が三九、三六二、六六〇円で、これに対する所得税額が一四、一六三、七〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により昭和五〇年分の正当な所得税額との差額一八、九六三、五〇〇円を免れ

第三、昭和五一年分の自己の実際の所得金額が七九、八一六、八三九円で、これに対する所得税額が三五、〇〇九、〇〇〇円であるのにもかかわらず、昭和五二年三月一九日、右税務署において、同税務署長に対し、所得金額が四二、七一八、〇九二円で、これに対する所得税額が一〇、七九五、五〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により昭和五一年分の正当な所得税額との差額二四、二一三、五〇〇円を免れ

たものである。

(右各年度における所得および税額の計算は、別紙修正損益計算書及び脱税額計算書のとおりである。)

(証拠の目標)

判示全事実につき

一、被告人の当公判廷における供述

一、被告人の検察官および大蔵事務官(昭和五二年八月二六日付、同年九月一九日付、同年一一月二九日付)に対する各供述調書

一、金本和子の検察官および大蔵事務官(八通)に対する各供述調書

一、各大蔵事務官作成の次の各調書事績報告書

(1)  木下信二作成の昭和五二年一二月一六日付(3)、同月一日付(一)、(三)同月一七日付(Ⅰ)、(Ⅱ)、同月一四日付(B)、(C)、(D)、(E)、(F)

(2)  山口勲作成の昭和五二年九月三〇日付、同年一二月一日付(1)

(3)  濃野崇作成の昭和五二年一二月一三日付(1)、(2)、同月一六日付、同月二二日付

(4)  川中図南雄作成の昭和五二年一二月一三日付(1)、(2)、(3)、(4)、同月一九日付

一、尾道税務署長各作成の青色申告の取消し決議書謄本および所得税の青色申告の承認取消通知書謄本

一、押収してある所得税申告書綴一冊(昭和五三年押第五一号の1)、青色申告者書類つづり一冊(同号の2)および交通事故請求控一綴(同号の7)

判示第一の事実につき

一、大蔵事務官木下信二作成の昭和五二年一二月一六日付調書事績報告書(1)

一、押収してある現金出納帳(49年)二冊(前同押号の5、6)、および決算資料綴(49年)一綴(同号13)

判示第二、第三の各事実につき

一、大蔵事務官木下信二作成の昭和五二年一二月一六日付(2)、同月一六日付(4)、同月一日付(二)、(四)の各調査事績報告書

判示第二の事実につき

一、押収してある家計簿(75年)一冊(前同押号の3)、現金出納帳(50年)二冊(同号の9、10)および決算資料綴(50年)一綴(同号の14)

判示第三の事実につき

一、大蔵事務官木下信二作成の昭和五二年一二月一四日付(A)の調査事績報告書

一、押収してある家計簿(76年)一冊(前同押号の4)、交通事故請求控一綴(同号の8)、現金出納帳(51年)二冊(同号の11、12)および決算資料綴(51年)一綴(同号の15)

(法令の適用)

判示所為の該当法条

判示各所為につきいずれも

刑法六〇条、所得税法二三八条第一項

(いずれも懲役刑と罰金刑とを併科する)

併合加重

刑法四五条前段、四七条本文、一〇条、四八条二項

(懲役刑については最も犯情の重い判示第三の罪の刑に加重、罰金刑については判示各罪所定の罰金額を合算した各範囲内で主文のとおり宣告する。)

労役場留置 刑法第一八条

懲役刑の執行猶予 刑法二五条一項

よって主文のとおり判決する。

(裁判官 正木勝彦)

別紙1の1

修正損益計算書

自 昭和49年1月1日

至 昭和49年12月31日

( )は内犯則額

〈省略〉

別紙1の2

〈省略〉

別紙1の3

〈省略〉

尚、事業所得中犯則所得金額は、同科目の当期増減金額から単なる計上もれあるいは計上誤りとして不正計算の対象から除外されて起訴された勘定科目の(一部分)〈2〉~〈6〉、〈10〉、〈11〉、〈13〉~〈17〉、〈19〉の増減金合計額を差し引いたものである。

別紙1の4

修正損益計算書

自 昭和50年1月1日

至 昭和50年12月31日

( )は内犯則額

〈省略〉

別紙1の5

〈省略〉

別紙1の6

〈省略〉

別紙1の7

修正損益計算書

自 昭和50年1月1日

至 昭和50年12月31日

( )は内犯則額

〈省略〉

別紙1の8

修正損益計算書

自 昭和51年1月1日

至 昭和51年12月31日

( )は内犯則額

〈省略〉

別紙1の9

〈省略〉

別紙1の10

〈省略〉

別紙1の11

修正損益計算書

自 昭和51年1月1日

至 昭和51年12月31日

( )は内犯則額

〈省略〉

尚、事業所得中犯則所得金額は、同科目の当期増減金額から単なる計上もれあるいは計上誤りのため不正計算の対象から除外されて起訴された勘定科目〈1〉の1部、〈2〉~〈6〉、〈10〉、〈11〉、〈13〉~〈17〉の増減金合計額を差し引いたものである。

別紙2の1

脱税額計算書

自 昭和49年1月1日

至 昭和49年12月31日

〈省略〉

税額の計算

〈省略〉

別紙2の2

脱税額計算書

自 昭和50年1月1日

至 昭和50年12月31日

〈省略〉

税額の計算

〈省略〉

別紙2の3

脱税額計算書

自 昭和51年1月1日

至 昭和51年12月31日

〈省略〉

税額の計算

〈省略〉

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